購入完了画面を活用した付帯収益 リテールメディア戦略の第一歩に

小売り店舗やECサイトにメーカーなどの広告を掲示する「リテールメディア」の活用が進んでいる。
リテールメディアを巡るトレンドと、購入完了画面を活用した付帯収益を獲得するソリューションについて、Rokt日本法人代表の三島健氏と、国内外で豊富なマーケティング経験を持つ射場瞬氏が語り合った。

※この記事は日経ムック リテール革命の記事を転載・編集しています。

 

(左)IBAカンパニー 代表取締役社長 射場 瞬氏、(右)Rokt 日本代表 三島 健氏

 

顧客の接点を活用して付帯収益を生み出す

射場  様々な分野でデジタル化が進んで、小売り事業者の間で、DXへの投資と利益のバランスをシビアに考えることに対して意識が高まっていると思います。 他方で、ECでは新規顧客の獲得が重要である半面、既存顧客を重視する傾向が強まっています。そのためにはデータに基づいて、顧客を深く理解しなければいけません。  

三島 顧客接点が非常に重要になっていると感じています。単にモノを売るだけでは、顧客に対して一過性の関係で終わってしまいます。限られた接点の中で、いかに収益性を高めていくか。その1つの方法がリテールメディアであり、顧客データを活用しながら、本業以外で付帯収益をどう作っていくかが問われます。 

射場 米国ではウォルマートが、早くから「モノを売る」という小売りの本業以外でどう収益を上げるかを重視してきました。本業以外で3つの収益の柱を掲げ、その1つとしてリテールメディアを挙げています。 

三島 食品宅配業のインスタカートは、直近の売り上げのうち広告収入が29%を占めるそうです。日本でもリテールメディアなどの広告に大きな金額が動きつつあります。特にこの5年は、小売り店とメーカーの戦略的なパートナーシップなどが進められるようになりました。

 

「買う場に近いところ」は顧客の心が動きやすい

三島 Roktが提供するソリューションは、顧客がオンラインで商品を購入した際に、購入完了画面にオファーを表示させるものです。日本では小売り企業のECサイト、食品デリバリーやチケット販売、映画館や旅行の予約サイトなど多くの企業でご利用いただき、付帯収益の獲得に役立てていただいています。

射場 顧客の買いたいという気持ちが最も動きやすいのが「買う場に近いところ」だと思います。従来のマーケティングでは、顧客が認知や興味といった段階を経て購入に至る流れを重視していましたが、最近では「SNSで見て買いたくなった」といった衝動が購入の動機となる例が増えてきました。購入完了画面を見ている顧客は、欲しいモノを買うと決断した直後であり、普段より購買意欲が高く、心が動きやすい状況にあるといえます。 

一方で、数年前と比較してAIなどの技術が大きく進歩したことで、顧客が対話形式の検索エンジンを使いながら、ECサイト上で目的の商品を探し出せるような機能も出始めてきました。「自分に合うものを見つけたい」という、顧客の潜在的ニーズは高いと思います。

三島 顧客にとっては、提示された選択肢が少ないほど選びやすくなります。欲しい商品を自ら積極的に検索して探す顧客に対しては、「自分に最適化された提案」が、リテールメディアに求められている機能だと考えています。Roktのオファーは、顧客データに基づいて最適だと考えられる第三者のオファーを提示する仕組みです。 

したがって、顧客が労力をかけて商品を選んで購入した後で何を提供するか、オファーの内容が非常に重要です。そのためにはオファーのデザインも問われます。例えば文章のボリュームを絞るなど見せ方に工夫をしないと、広告感が出過ぎて避けられてしまいます。顧客に対してどれだけ響くコンテンツを出せるかが成否のカギになります。 

顧客が求めているものを出せなければロイヤリティーは生まれず、広告主であるブランド、オファーを提供するEC事業者にとっては収益化にもブランドの向上にもなりません。そこをデータの活用によってどれだけ効果的なオファーを提供できるか。なおかつ、EC事業者が簡単に導入し利用できるか。そうしたチャレンジを、Roktは2012年の創業以来、グローバルで継続しています。

 

設置が容易で効果も高い、まずはECで広告を始める

射場 新規顧客の獲得コストは一般的に高いですが、効果的な顧客獲得と継続的な購買につなげることで、コストを下げる必要があるかと思います。 

三島 リテールというビジネスは、消費行動の多様化などにより、需要を正確に予測することが難しくなっています。そうした背景から、どの事業者も、リテールメディアの実装や運用に費やせるリソースはおのずと限られてきます。 

Roktのプロダクトは、ECサイトにタグを追加するだけで実装できます。保守費用もかかりません。それでいて収益性は相対的に高い実績があります。従来のバナー広告ではeCPM(広告1000回表示当たりの収益)は数十円、多くても数百円というのが一般的ですが、Roktでは数千円から数万円など収益性が高いのが特徴です。購入完了画面という限られたスペースでECサイトの収益を最大化できることが私たちの強みです。 

リテールメディアといえば実店舗のイメージが強いですが、ECサイトでは比較的導入しやすく、またRoktは導入・運用費用がかからないため、本業以外の新たな収益源としてぜひお試しいただければと思います。

射場 店舗とECサイトの両方を運営している事業者にとっては、本来なら両方で施策を打つべきところですが、まずはオンラインでトライアルをしながら、そこで得た学びを店舗でのプログラムに生かしていくという考え方もあります。デジタルサイネージからリテールメディアを始めて苦戦している例は多いので、最初はECサイトで始めてみるのは有効だと思います。

 

Rokt Thanksの3つの特徴

❶ファーストパーティデータの活用

ECサイトが自社で取得した顧客データを活用することで、顧客に対して最適化された広告オファーを提供します。 

❷購買体験を阻害しない

オファーは購入完了後に表示されるため、ECサイトの顧客が本来の購買プロセスで感じるストレスを最小限に抑えます。 

❸ノンエンデミック広告の高い収益性

ECサイトの顧客にとって価値のある広告を出しつつ、収益性を最大化します。例えば、属性や購買履歴、行動履歴などのデータに基づき、顧客の興味・関心に合った商品やサービスを提案することで、顧客体験を損なうことなく収益を生み出します。 

自社が取り扱うサービスをカートに追加してもらうためのエンデミック広告に対して、Roktは自社の取り扱わない第三者のサービスの広告、すなわちノンエンデミック広告を表示させます。購入過程においてはエンデミック広告が効果を発揮しますが、購入完了後はすでに決済は完了しており、ノンエンデミック広告の方がより効果的で、ECサイトの収益性向上に大きく貢献します。 

 

購入や予約が完了した直後に、顧客の興味に合わせてシンプルなオファーを表示。
一般的な広告配信ツールと比較して高い収益性を実現している